生き方の話
私は1冊のノートを完璧に仕上げたいのです。
真っ新なノートの1ページ目に、おそるおそる、
丁寧に文字を書き入れるように、
そのような心地よい緊張感がずっと、
続けばいいと、そう思うのです。
1ページ目。それはもう美しい文字が心地よい感覚で並びます。
2ページ、3ページ目もそうでしょう。
ですが4ページ目にもなると、どこか文字がイビツになり、間違った文字があったりします。
私は「面倒だ」とは思いながらも、あの美しいページを思い出し、修正テープなんかで間違いを正していきます。
そして5ページ、6ページと枚数を重ね、気付けば10ページをこえた頃。
そこに美は存在しませんでした。
それどころかノートに記されている文字はどれもイビツで間違ったものばかりです。
修正しようにも、これでは大変な時間がかかってしまう。
そこで私はそのノートを捨てました。
そして真っ新なノートを1冊。
2度目の1ページ目です。「もう前のようにはならない」と心に誓い、ノートに文字を書き入れます。
残念ながら書き込まれた文字は、美とは程遠いイビツなものでした。
私は「くだらない」とノートを投げ捨てました。
それからしばらく、私はノートを手にしませんでした。が、ふと思い立ち、もう一度、真っ新なノートを買いました。
いっぱいの文字を書き、間違えれば修正し、
気に入らなければ破ってしまったり。
それでようやく、20ページをこえました。
その時です。
飲んでいたコーヒーがノートに零れました。
破っても、もう駄目です。
私はコーヒーまみれになったノートを見てぽつり。
「───────」
今、私はまだコーヒーまみれのノートを手にしています。
美しくもなんともない、他人が見ればゴミ同然のノートです。
でも、それでいい。
美しくなくていい。
間違いがあってもいい。
私は私だけのノートを持っていればいい。
私は1冊のノートを完璧に仕上げたかった。
でも今は、ただ思うままに仕上げたいのです。
なわけねぇだろカス、エルメスのノート持ってこい
字は書道家に書かせろ、誤字は斬首や!